データサイエンスに立ち向かわなければならない日本の現状と課題について
椿 広計, 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 所長
かつて日本がデータサイエンスをけん引していたと言ったら、賛同頂けるだろうか?企業内のヒトつくり、データに基づく自律的問題解決能力育成が、世界の範とされていたのである、データ解析の知識だけではなく、データを収集し、活用するプロセスの知を世界に先駆けて産業投入したのも日本である。講演者は若いころ慶應義塾大学SFCで、JMPに基づくデータサイエンス教育創設を支援したが、学生自らが自律的にデータ分析テキストを改訂したことを目の当たりにして日本の将来は明るいと信じていた。しかし、1990年代以降、米国は日本の動きを真摯に学習し、データに基づき、適切なソリューションを実現できる「統計家」を系統育成し、現在3万を超える統計家が産官で活躍し、年率3%以上の増加が続いている。今や日本は世界と比較して周回遅れの状況となっている。日本の産業競争力や社会課題解決能力を再興したいならば、データに基づく問題解決プロセス(データに基づく問題発見、問題の原因の究明、原因に対する対策の最適化等)を使いこなし、そこに適切な統計数理科学的技法を活用できる人材層を再生し、組織の問題解決力を再興しなければならない。現在、統計数理研究所は、多様な学術分野で統計エキスパートを育成するための大学教員育成事業を23大学等と協働で開始し、産学連携事業も急拡大している。しかし、欧米や中国等がこの動きを更に加速している中、All Japanの活動を設計しなければ勝負にならない。本講演では、日本の現状をチェックし、これから何をなすべきかを考察したい。
※ ライブセッションでのみご視聴いただけます。オンデマンドでの公開はございません。